最北の町でロシアを感じる稚内の散歩
羽田から飛行機で稚内へ向かった。
稚内空港に近づいて着陸態勢に入ると、窓の下に見えてきたのは森と草原と海だった。その中を鉄道の線路がくねくねと曲がりながら進んでいるのを見ると、なんだか日本じゃないみたいだなと思った。北海道まで来ると景色が違う、というのはもちろんあるのだけど、それ以上にどこか外国に来たような感じがするのです。

これは以前、ロシアのノヴォシビルスクに行ったときとちょっと似ているかもしれない。シベリアまで来たのだから、もっとものすごく「シベリア」なところを想像していたのに、実際に街へ入ってみたら普通の大きな都市だった。稚内も飛行機から見た風景ではものすごく遠くまで来た感じがしたのに、空港からバスに乗って稚内駅まで出てくると、思っていた最果てとは少し違っていて、コンビニはあるし、バスも普通に走っている。
駅の近くには稚内副港市場という、道の駅のようでもありショッピングモールのようでもある施設があって、なんなら日帰り温泉まである。普通に便利なのです。日本のいちばん北まで来たのだから、もう少し何もないところを勝手に想像していたのだけど、駅の周辺だけ見ていると、日本の地方都市とか郊外のような風景でもある。このギャップがなんだか不思議だった。



一方で、少し街を歩くと急に稚内っぽい風景が出てくる。商店街にはマトリョーシカが描かれた看板があったり、道路標識には日本語だけではなくロシア語も書いてある。海の向こうにはサハリンがあるわけで、やっぱりここはロシアに近い街なのだなと思う。ただ、その商店街は昼間に歩いてもほとんど店が開いていなかった。建物や看板はちゃんと並んでいるのに人があまりいなくて、なんだか映画のセットの中を歩いているみたいだった。
駅周辺には人がいるし、少し離れたところには飲み屋が集まった歓楽街のような一角もある。にやかな場所と、びっくりするくらい静かな場所が近いところにある。稚内はこの差がかなり大きい街なのかもしれない。




稚内に来て、一番「遠くまで来たな」と感じたのは、やっぱり稚内駅だった。日本最北の駅で、線路はここで終わっている。ホームは一本しかなくて、その先に線路はない。飛行機なら羽田から数時間で来てしまうし、空港からバスに乗っている間もコンビニや住宅が見えるので、それほど最果てという感じはしない。

でも、線路が本当にここで終わっているのを見ると急に実感する。夜7時を過ぎて、最終の普通列車が稚内駅に入ってくるのを見た。列車はここまで何時間も走ってきて、もうこの先には行かない。それをホームの上から眺めていたら、ああ、本当にずいぶん遠くまで来たんだなと思った。稚内の郊外まで行けば、また全然違った景色があるのだと思う。でも僕が歩いた稚内の中心部には、ロシアを感じる風景があり、誰もいない商店街があり、そのすぐそばにはコンビニも映画館も温泉もある。
最果てに来たような感じと、いつもの日本の地方都市にいる感じが何度も入れ替わる。
稚内は「日本のいちばん北」という言葉から想像していた場所とは少し違っていたのだけど、そのよくわからないギャップが、なんだかすごく面白い街だった。












