稚内から旭川へ、宗谷本線の各駅停車旅

稚内から旭川まで、宗谷本線の各駅停車の旅。夜明けにホテルをチェックアウトし、稚内駅まで歩く。こんなに早い時間から、なんでこんな旅をしているのだろうかと思ったりもした。

それでも宗谷本線から見た景色には、旅をしている感覚が色濃くあっって、今でもずっと記憶に残っている。旅って形に残らないものだけど、体験や記憶が旅なのであればこの路線の旅は明確に旅をしていて楽しい。

これは2019年ごろの旅の記録なので、現在は同じ時刻で走っていないかもしれない。駅そのものが残っているかどうかも危うい区間がある。

廃止された抜海駅

今回のルート

  • 稚内 05:20発 → 糠南 06:46着
  • 問寒別 10:03発 → 幌延 10:56着
  • 幌延 11:47発 → 名寄 14:25着
  • 名寄 14:33発 → 旭川 15:55着

早朝の稚内駅を出発

稚内駅のホームで待っていると、一両編成の列車が到着した。これから旅が始まるのかと思うと、不思議な感じがする。

稚内駅を出て南稚内までは、まだ人の暮らす世界だった。しかし、そこから先は大自然というか、ただただ圧倒されるような景色が広がっている。

始発列車

飛行機で稚内へ来るときに見た風景もすごかったが、実際にその場所を列車で走っていると、自然の大きさがもっと直接的に伝わってくる。

牧場のような風景が広がっているのに、人が生活している気配はほとんどない。道路さえ見えない。いくつかの駅を通り過ぎるけれど、古い貨物車両が置かれているだけだったり、駅から細い路地のような道が延びているだけだったりして、ここで降りる人はいるのだろうか、と思ってしまう。

抜海駅をすぎると原野
たぶん100年前から同じ風景な気がする
遠くに海、天気がよければ利尻富士が見えるらしい
途中の駅
こっちの駅は結構いたんでいる

車内にはエアコンがなく、窓を開けることができた。窓から吹き込んでくる風は、少し冷たく感じるくらいだった。7月なのにだいぶ涼しく、寒さすら感じる。

雄信内駅について

雄信内駅では列車の行き違いがあり、向かい側にもう一両の列車が見えた。こちらが待つ側であれば、駅に降りて少し眺められたのにと残念に思う。

この旅を計画しているとき、途中の駅で降りて散歩しようと雄信内で降りることも候補にしていた。しかし、周囲は熊の生息域で危なすぎるだろうと思い、やめたのだった。Google mapで念入りに確認してみてもこれはやばい。一方で国道まで出ると普通の北海道の風景のような気もする。

その判断は正しかったと思う。それでも、そのとの経営合理化によって廃駅になり、駅舎は取り壊されてしまったらしいと知ると残念だった。このときに見た風景を、もう同じ形で見ることはできない。

雄信内駅
雄信内駅、この駅舎も取り壊されたらしい

糠南駅で列車を降りる

雄信内の次が糠南駅だった。ホームは簡易的な板張りで、一両の半分にも満たないほど短い駅じゃないだろうって思ったりする。そして本当に駅なのかと思ってしまうような場所だが、この旅の時点では現役の駅だし、なんなら旅のあとにさらに人気が出ていたりする。

ここで降りようとするとき、車内にいたおばちゃんから不思議そうな顔で「あんた、ここで降りるのか」と言われたのだが、本当にそう思う。なんでここで降りるのだろうかって思うし、ここになにがあるのかって思うよな。

糠南駅で降りる
列車が行ってしまうと静か
反対側、駅舎が見える
糠南駅の駅前
さて駅舎です
開けます
なんか秘密基地感ある
大切に使われている感じがすごくよい
こんな感じの駅、いろいろな駅がある
駅をあとにして問寒別まで歩くことにする

そして、列車を降りると、ものすごく静かだった。人の気配はまったくない。

ホームの横には物置小屋のような建物があり、それが待合室になっている。扉を開けてみると、除雪道具やベンチなどがコンパクトに収まっていた。案外、居心地はよさそうだ。この駅舎というか物置は、事情を知った物置のメーカーから寄贈されたものらしい。小さな窓もあったりする。

ただ、周囲には人家が見当たらない。ここで日常的に降りる人はいるのだろうか。秘境駅と呼ばれる駅はいくつかあるけれど、糠南はぶっちぎりで秘境だと思った。

糠南駅から問寒別駅まで歩く

時間があるので周囲を少し散歩し、名残惜しく思いながら糠南駅を出発した。隣の問寒別駅まで歩くことにする。

問寒別方面には、わりとしっかりした道路が通っている。集落までは2キロ少しで、のんびり歩いて30分くらいだったと思う。

糠南駅から表通りへ出て、問寒別方面へ進めば道路なのだが、逆の雄信内方面は薄暗い森だった。雄信内駅で降りてこようって思わなくて本当によかった。Google mapのおかげだと思う。

糠南駅の通り、左側に小さく駅が見える
こっちに行くと雄信内方面、行かなくてよかった
こっちはちゃとしている
途中に神社があった
橋をわたると問寒別の集落
問寒別のメインストリート
コンビニ発見
問寒別駅
問寒別駅、糠南と比較すると豪華

それでも途中の草むらで動物の気配を感じ、ものすごく驚いた。あれは何だったのだろう。鹿か何かだったのかもしれない。

橋を渡ると問寒別の集落に入る。通りに面して建物が並び、学校もある。コンパクトにまとまった小さな町という感じだった。

それでも、外界から切り離されたようにも感じるこの町での暮らしは、どんなものなのだろう。必要なものはひととおりありそうで、案外快適なのかもしれない。

鉄道で旅行していなかったら、こういう北海道の小さな町に立ち寄り、そこでの生活を想像することもなかったのだろうなと思う。

集落にはコンビニと商店の中間のような店があり、おにぎりとビールを買って朝食にした。

問寒別駅の駅舎は物置小屋ではなく、古い車掌室を改装したものだった。トイレは外にあるが、こちらもきれいに使われている。駅全体が大事にされている感じがした。

問寒別と外の世界をつなぐ宗谷本線だが、この旅の当時、駅に停まる列車は一日に6本。特急は通過していく。

一本逃すと、その日の予定が終わる。寝落ちして降りそこねたら大変なことになりそうだ。

ビールを飲みながら、駅でのんびりと数時間を過ごす。旅を計画しているときは、何もない駅で数時間も待つなんて暇すぎるのではないかと思っていた。

しかし実際に過ごしてみると、あっという間に列車の時間になった。この待ち時間こそが旅なのだなと実感した。

問寒別から幌延、そして旭川に行きつ戻りつ

問寒別から北上して幌延へ向かう。先ほど降りた糠南駅を車窓から再び眺めながら、「この駅で降りることは、もうないのかなあ」と思った。そして、たぶんもうない。

幌延は、このあたりのターミナル駅のようだった。特急列車も停まり、各駅停車も休憩のため長めに停車する。

駅を降りて周辺を散歩し、駅舎内にあった観光案内所でコーヒーを買った。どうってことのないコーヒーだったのかもしれないけれど、暖かさがしみる味わいだった。

これも、この旅で覚えていることのひとつです。

幌延駅
幌延駅前
駅でコーヒー飲んで待つ
旭川駅行き

幌延で1時間ほど待ち、南行きの各駅停車に乗り込む。早朝に通った雄信内、そして糠南駅を再び通っていく。同じ日本に住んでいるけれど、僕が普段いる環境とはまったく違う。ずいぶん遠くまで来たのだと思う。

時差もないし、来ようと思えばいつでも来られるのだろう。それでも、次に来ることはあるのだろうか。そんなことを考えていた。

音威子府を過ぎると、のどかではあるものの、人のいる風景が少しずつ増えてくる。車内も次第に賑やかになり、列車は名寄駅に到着。名寄でいったん降りて散歩し、次の列車に乗ろうかとも思った。しかし稚内から来ると、名寄はずいぶん都会に見えた。あまり途中下車する気分になれず、そのまま快速で旭川まで移動することにした。

途中、塩狩までの区間は峠になっている。ディーゼルエンジンが唸りを上げて坂道を登っていくのだが、なかなかスピードが出ない。なんとかあえぎながら登り切るような感じで、塩狩駅に到着した。ディーゼルエンジンも大変そうだ。

そして旭川駅に到着した。めちゃくちゃ都会で驚いた。駅前には巨大なロータリーがあり、イオンもある。

稚内から数時間で、こんなにも風景が変わるのかと思う。朝にいた糠南と旭川は同じ線路でつながっている。そう考えると、案外近いのかもしれない。

この日の旅は、糠南駅で列車を降り、問寒別まで歩いた区間にすべてが凝縮されていたような気がする。

音威子府
これも北星という駅だったんですよね
名寄に到着
比布駅
晴れてきた
そして旭川に到着

関連記事