春にはまだちょっとはやい3月下旬の四国を旅行してきた。JR四国ではバースデイきっぷなるものがあり誕生日月の連続3日間、JR四国全線と土佐くろしお鉄道全線が特急含めて乗り放題になるお得な切符がある。僕は3月生まれなので、ちょっと使ってみるかとインターネットで購入したのだが、免許証のコピーを別途FAXで送ったりわりとアナログな購入方法だった。
四国までは就航したばかりのジェットスターで成田から高知までのフライト。高知空港から高知市街まで行きはリムジンバスを使ったのだが、帰りはごめん・なはり線ののいち駅から乗り合いタクシーで向かった。乗り合いタクシーとはいえ、乗客は僕以外にいなかったのだけど。この乗り合いタクシー、要予約とはいえかなり便利だった。
高知には初日と最終日に滞在して、初日はちょっと豪華に城西館に宿泊。都市型旅館みたいな感じの宿で料理も美味しく上品で快適な宿だった。ただ、ちょっと街中から離れていたりしたので夜飲み歩いたりするのには向いていない。
高知といえばカツオのたたき、そして日本酒の酔鯨。ということで、このふたつを心ゆくまで味わえるのは市街地にあるひろめ市場。ここ朝からお酒が飲める上、実際結構な人がお酒飲んでいる。やはり日本屈指な酒飲みの国、高知なのである。
ひろめ市場でカツオのたたきを食べるならば「やいろ亭」の塩たたきが安定していて美味しい。分厚くきられたカツオは食べ応えもある。すぐ近くには酔鯨を飲ませてくれる酒屋があるのもいいところ。
地元の人で盛り上がっていたのは悠楽というところ。ここはクジラやうつぼなどカツオ以外のものも結構あって、知らないおじさんと盛り上がってしまった。酔っ払ってなんぼの場所だから。
翌日からは列車の旅。高知の西側のターミナル駅である窪川まで行き、そこで町を少し散歩してみる。古い建物が多く残っていてのんびりしたいい町だったなあ。うなきちで四万十うなぎを食べたり、古民家カフェの半平でゆっくりとした時間を過ごしたり。車だと先を急いでしまうところだけど、列車の待ち合わせ時間があってこそ余裕をもったのんびりとした旅、こういうのって悪くない。
窪川から一駅のって若井駅に降りて近くにある若井沈下橋を眺めてみる。沈下橋って前から知ってはいたけれど合理的で面白い。とはいえ、近くには立派な橋が出来たりしていて時代が変わってきているのだなとも思う。沈下橋を楽しめるのもあと少しなのかもしれない。
夕方近くになってようやくふたたび移動を開始。中村まで特急でいったあと、土佐くろしお鉄道で宿毛まで到着。ホテルに荷物を預けて飲みにでかけるとする。
宿毛の飲み屋街というか旧市街地は隣駅である東宿毛にあるのだが、宿毛駅あたりから歩いても15分くらいなのでどっちに泊まっていてもいい。行きは鉄道を使い、帰りはベロベロに酔っ払いながらなんとか歩いてホテルまで戻ってきた。
宿毛市役所の近くにある蔵という居酒屋で地元の魚や野菜を味わったあとは、かしんという居酒屋で再びお酒飲んで刺身を食べたり、揚げ物を頼んでみたり。ここで切り上げてもよかったのだけど、宿毛の街中にポツンとあるホルモン焼きの看板が気になって入ってみたらすごく暖かい接客で旅に出て良かったなあと思うとともに色んなお酒を飲んでしまった。焼酎の古酒みたいなものまで飲んだ気がする。これこそが旅の出会いだなあ。宿毛へまた行きたいと思うもの。
3日目は宿毛駅前から宇和島まで路線バスの旅。路線バスとはいえ2時間くらい乗っている長距離路線。四国の端っこをのんびりと路線バスに乗り、途中から乗ってくる人や小さな漁港で降りていく人を眺めたりしていた。色んな場所にいろいろな人生があるんだなって当たり前のことだが、すごく遠くまで来た感覚がある。
ようやくのことで宇和島に到着。朝から空いている道の駅の食堂で宇和島名物の鯛めしを食べてきた。鯛めしというと、焼いた鯛と一緒にお米を炊き上げる料理というものを想像するのだが、本場である宇和島の鯛めしは刺身を甘辛いタレと卵黄にからめてご飯と一緒に食べるスタイルなのです。鯛って焼いたのが美味しいと思っていたが、この食べ方も絶品だ。
ちょっとだけ愛媛に入ったものの、予土線でふたたび高知へと戻ることにする。四万十川に沿って走る予土線は日本屈指のローカル線で一度降りると次の列車まで3時間とか待つことになる。江川崎からしまんトロッコに乗って土佐大正まで四万十川に沿ってオープンエアな列車旅。四万十川沿いの桜はいくつか咲いてきていてはやくも春を感じる風景にテンションがあがる。途中でみえた一面の菜の花畑も美しかった。
土佐大正では4時間近い待ち時間。昼過ぎについて次の出発が夕方になるわけだ。そんなに時間をつぶして飽きないだろうかと思ったりしていたのだが、駅前で自転車を借りて沈下橋から四万十川を間近に眺めたり、酒蔵で試飲したり、焼酎銀行で口座開設したり、のんびりとした小さな町中を散歩していたりしたらあっという間に時間が過ぎてしまった。旅先での出会いだったり、土佐大正の駅のホームでお酒を飲みながら眺めた夕陽だったりというのは旅をつづけていくなかで最も濃い記憶になっていると思う。こういうふとした風景の方があとまで記憶に残るものなのだよな。
そして再び高知の夜。何軒かはしごして飲み歩いたけれど、もっとも印象に残ったのは「にこみちゃん」だった。高知まで来ると結構遠いし、地元の料理でカツオ食べたいとか色々思うわけだが、にこみちゃんみたいに地元の人たちに愛される居酒屋というのもまた旅先ならではの体験だったりするのだよな。いいところだった。
最終日は成田に戻る便が夕方なので、それまで少し旅をつづけることにする。高知駅からもうひとつの土佐くろしお鉄道の路線であるごめん・なはり線へと向かう。オープンデッキの観光列車が走っていて、その名の通り「一部外側がベランダみたいになっている」列車なのだが、これだとトロッコ列車みたいな観光列車にしなくても外の空気を楽しめてよい。
トンネルを抜けて突然海がみえた時にはその青さに心奪われた。潮風をうけながら進む列車旅は気持ちがいい。台東へ向かう普快車の旅みたいだなあと思いながら乗っていたのだが、台東の列車よりも短い区間で凝縮された美しさがある。
安芸駅で降りてランチを食べて、そろそろ帰路へとつくことにする。帰りの列車は普通の車両だったこともありうとうとしていたら、あっという間に降りる駅であるのいち駅に到着。危ない、危うく乗り過ごすところだった。
のいち駅からは予約していた乗り合いタクシーで土佐龍馬空港へと向かう。天候にも恵まれたし、四国を満喫した気がする。まだまだ日本にも知らないところがあるなあって強く感じた旅だった。いつかまた訪れたいと思う。
この旅の記録:早春の高知で乗り鉄旅
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