ロシアワールドカップを観に行くついでに、北欧も少し見てみようと計画したら2週間の行程になってしまった。途中、サンクトペテルブルクを出るあたりまではやたらと長くて、結構旅行にうんざりしていた。だいたい、僕は旅行に関してはかなりスロースターターというか、空港から出発する瞬間がもっともテンション低いのだが(だいたいひどく疲れている)、今回の旅ではそれが結構続いてしまった感じ。
そしてすべての手配を自分でアレンジしていたので、すごく面倒くさく「ようやく旅行が半分終わったのか」とか思っていたのだが、エストニアのタリンやフィンランドのヘルシンキでのんびりしているうちに時間はあっという間に過ぎていき、帰りのノヴォシビルスクではもう終わりなのかっていう気分になっていた。人間の感情って不思議なものだ。
ということで14日間の旅の記録。
S7航空という聞いたこともないエアラインでロシアまで行くことになる。LCCでの定番ともいえる小さな飛行機でヨーロッパまで行くとか正気の沙汰なのかって思ったし、実際モニターもない飛行機では自分がどこを飛んでいるのかさっぱり分からなかったが、まあ座席でじっと時間が過ぎることを耐えていれば案外着いてしまうものだなと思う。
さらに、モスクワでは郊外にあるAirbnbで旧ソビエト時代につくられた感じのアパートメントに滞在した。大丈夫なのかなとかかなり思っていたのだが、ワールドカップ期間中だったこともありロシアはすごく寛容というか、むしろ住むように滞在できて、夜にモスクワから地下鉄に乗って終点まで乗っていきアパートまで帰る静かな住宅街とか、途中にあるピザ屋の賑わいとかがなつかしく思えてくる。いい旅だったなあ。
モスクワでは定番どころはだいたいめぐったのだが、赤の広場に入り、聖ワシリイ大聖堂をみたときにはついにモスクワに来たんだっていう気分になった。ワールドカップの試合ももちろん楽しかった。クリスティアーノロナウドはすごいすらっとでかくて遠くからもすぐに分かるくらいだった。
ようやく街になれてきたなあというタイミングでサンクトペテルブルクへ移動。
帰り道、トランジットで少しモスクワに到着したとき、なんだかこのちょっとヨーロッパのなかでも独特な雰囲気がすごくなつかしく、戻ってきたっていう感じがあって楽しくなった。ネコサーカスで舞台にあがったのもいい旅の思い出だな。
モスクワは連日30度近い暑さだったのだが、サンクトペテルブルクは20度にも達しない寒さで驚く。しかし、モスクワの暑さが異常だったのかもしれないな。泊まった安宿の前の通り道はバーがあったり賑やかで深夜まで楽しかった。
ワールドカップの試合はブラジル戦。ネイマールの献身的な動きよりも、カゼミロのボール奪取のうまさに驚く。あんなに簡単に相手からボールを奪い取れるものなのかというくらい軽々とした動きで中盤の底を支えていた。しかし、それでもワールドカップでは優勝できず、チーム全体で献身的なプレーをつづけていたクロアチアが決勝戦まで行くのだからサッカーって面白い。
エルミタージュ美術館の巨大さ、そして多彩なコレクションは見てまわっているだけで十分楽しかったなあ。しかし、全然すべてをみて回った感じがしない。いつかまた行きたい美術館だ。
サンクトペテルブルクからさらに北に向かいペトロザヴォーツクへの旅をしてきた。目的地はオネガ湖に浮かぶキジー島。古い木造建築が集まる島になっていて、電線すらなく、木造の建物がぽつりぽつりとある風景は古い絵本の世界に入り込んだようだ。
ここで見た白夜の風景や、キジー島の丘の上にある教会から眺めた風景はずっと忘れることがないだろうなあって思う。あのとき感じた風とか、太陽の光のあたたかさとか旅をして、ここまで来てよかったなって心から思えるものだった。
最初はロシアワールドカップだけみて帰る予定だったのだが、エストニアのタリンに友人が住んでいて、引っ越しの連絡で「お近くにお立ち寄りの際には遊びに来てください」とか書いてあったからだ本当に来てしまった。
サンクトペテルブルクからエストニアのタリンまでバスで6時間。これはまあ、近いといっていい距離だ。
勢いで来てしまったタリンなのだが、友人の案内もありすごく充実していてそして楽しい旅行になった。エストニアは物価も安いし、街もコンパクトで美しい。手軽に来られるヨーロッパとしてもっと認知されてもいいくらいだと思う。
タリンから船で2時間のところにあるヘルシンキへ日帰り旅をしてきた。ロシアもエストニアもヨーロッパとはいえ、なんだかちょっと野暮ったいというか田舎っぽさがあるのだが、ヘルシンキはもう完全に洗練された都会だった。田舎からやってきた旅行者という感じで旅をしていた。もちろん、洗練さに伴い物価も高くてあちこちで恐る恐る買いものをしていたりしたのだが。
アアルトの建築に興味があり、彼のアトリエや自邸をみるツアーに参加してきた。質素でシンプルな暮らしなのだが、それがすごく居心地がいい。宮殿に住むことが人の幸せではないなって思うわけです。手の届く範囲のものに囲まれて、美しい光と暖かい部屋があれば幸せ。生活ってそういうものだなって感じられる旅だった。いつかまた来たい街です。
この旅で最後にトランジットに立ち寄ったシベリアの首都であるノヴォシビルスク。森に囲まれた街中は洗練されているのだが、たまに戦場から帰ってきたのかというようなボロボロで泥だらけの車が走っていたりして、郊外は厳しい自然があるんだなって思ったりする。
厳しい自然が残るシベリアのなかでのオアシスみたいな街なのだが、ここで食べたペニメリやロシア料理はシンプルながら、しみじみとした旨みがありいい旅の締めくくりになったと思う。モスクワに比べて日本との時差が二時間しかないので時差ボケを直すにもちょうどいいトランジットだった。
ひさびさに長い旅行をしたのだが、さすがに結構疲れたなあ。帰ってきてしばらくはボーッとしていた気がする。しかし、沢山移動して色んなものをみてすごく刺激的な旅だった。ロシアに対する印象ががらりと変わり、また行きたいなって思える旅行だった。
この旅の記録:ロシアワールドカップと北欧への旅。
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