宇和島から予土線の旅。しまんトロッコに乗って土佐大正駅に到着したのが13:44。窪川方面へ行く次の列車は17:23の出発で4時間近くの待ち時間となる。なので、しまんトロッコに乗ってきた乗客の大半は土佐大正駅に降りることなく、待ち合わせしている宇和島方面の列車に乗って帰っていってしまうのだが、僕はこの土佐大正駅のまわりでのんびりと時間をつぶすことにした。
土佐大正駅が開業したのは1974年で昭和の時代なのだが、山小屋みたいな木造の駅舎は雰囲気があるし、駅前にある道路標識には「国鉄 土佐大正駅」と書いてあったりして、どこか昔へタイムリープしたみたいな感覚が起きる。店内にBGMの流れていない眠たげスーパーマーケットや、やっているかどうか分からない(営業していた)レンタルサイクル店とかのどかな小さな町です。
駅前でレンタルサイクルを借りて行ってみたのは6キロほど離れた上岡沈下橋。若井沈下橋よりもずっと沈下橋らしいというか、四万十川にポツンとかけられている小さな橋はちょっと不思議な光景。これ、渡っていいのか?となるのだが車も通れるちゃんとした橋なのです。橋の上で座って川面を眺めるのだが、まるで川の上に立っているかのような距離感。水の流れる音だけが響いていてすごくのどかだ。
土佐大正への帰り道で休憩がてら立ち寄ったのは土佐大正の道の駅。ここにある桜の木が一本だけ早咲きで満開になっていて、テラスに座って食べたうなぎ弁当はいままで食べたうなぎのなかでも記憶に残る料理だったなあ。何度もいうけれど、本当にのどかなところだ。
土佐大正の駅から徒歩圏にあるのは明治時代からやっている造り酒屋の無手無冠。栗焼酎「ダバダ火振」で有名な蔵なのだけど、もともとは日本酒をつくっていて四万十で採れたお米をつかった日本酒はすっきりしていて飲みやすい。あれこれ試飲して買ってしまった。
焼酎はどうしたかというと、近くにある四万十焼酎銀行という焼酎を預ける不思議な銀行で買うことにした。無手無冠が手がけている事業なのだが、もともとあった銀行を居抜きで酒屋みたいにしている。ここで買った焼酎は銀行の貸金庫で熟成させてくれて3年後にちょっとだけ利子をつけて送ってくれるのです(取りに来てもいい)。焼酎を熟成させてくれた上に利子までもらえるなんてっていうのが面白く口座をひらいて預けてきた。3年後に受け取るのが楽しみだ。
山並みに太陽が隠れるくらい日が傾いたころに土佐大正駅に戻ってきた。無人駅なので誰もいないし、1日4本くらいしか通っていない列車に乗る人も今日はいないみたいだ。駅のホームで町を眺めながら無手無冠で買ったダバダ火振のチョコレートと日本酒を味わいながら列車を待つことにする。
四万十川に面した土佐大正の町は高台にある駅から一望できるくらいにコンパクトだ。4時間近い待ち時間がなければここに来ることもなかったかもしれないし、駅のホームでこんなにのんびりとお酒飲んだりすることもなかったと思う。うまく説明できないのだが、ローカル線の旅のよさがつまった土佐大正の待ち時間の旅だったなと思う。いつかまた、ここにこういう旅をしに来たい。
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